鳥取県の米子市と境港市を結ぶ弓ヶ浜半島は、その昔「伯州綿(浜棉)」と呼ばれる和綿の一大生産地でした。私たちの織物の素材である綿は、この弓ヶ浜半島で自家栽培しています。
私たちは、かつて浜棉を健やかに育てていた気候風土と土壌、いうなれば“土の力”を信頼しており、そのため綿畑には、農薬を一切使用していません。それでも毎年、元気な綿がたくさんたくさん収穫されています。
収穫した綿は、種を取り、ほぐして空気を含ませたのち、いよいよ糸を紡いでいきます。糸車は使いますが、綿を持つ強さや引く力の加減、ハンドルを回す速度など、操者の手の技が大きく影響する作業です。
効率を考えれば、より機械化を進めたほうがいいのでしょう。しかし、私たちは手紡ぎの優しい風合いが好きなのです。そしてなによりも、綿が糸になっていく一連の作業の中での、ゆったりと流れる時間が大好きなのです。
染色の中で、藍染めに関しては、島根県安来市の青戸秀則氏の紺屋で特別に染めてもらっています。
そのほかの染色の素材では、冬青(そよご)、虎杖(いたどり)、刈萱(かるかや)、ミモザ、赤芽樫 (あかめがし)、五倍子(ごばいし)、梅、枇杷(びわ)などを使用しています。
ほとんどの素材は野山で採取してきたもので、そのまま煮出して染めています。
なお、媒染(ばいせん)は、灰汁(灰あく)、消石灰、鉄錆で行っています。